スノーデン

今回も映画レビューです。

主演ジョセフ・ゴードン=レヴィットのこの作品。タイトルの通り、アメリカ国家の最重要機密を流出させた人物である、エドワード・スノーデンについてのノンフィクション本が原作となった作品です。一時期日本のニュースでも取り上げられていたのを覚えている方も多いでしょう。私はこのことにさほど興味もなかったため、当時は大変なことを”やらかす”人もいるんだな、と思った程度でした。当時の私の考えは、大衆こそ正しいものである、と思っていたのです。だから国家という大きなものに楯突いたこの人物が悪に見えていたのです。

この映画が上映される、という情報を得たときに初めに思ったことは主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットの事です。何を隠そう私は彼のファンなのです。と言っても数多くの彼の作品を見たわけではなく、「The Walk」の彼の演技を見て、心惹かれたというところです。

彼の事は置いといて、この作品、非常にクールな出来になっている作品でした。決して大きく物事が見られているわけでなく、かといって縮こまっているわけでない。凄く身の丈に合いながらも、身の丈以上のことをやろうとする。一人の人間を丁寧に描いた作品でした。

ここだけみると訳が分からないと思うので、多少どのような流れで流出まで至ったのかその経緯を書いてみます。ネタバレを含みます。

 

 

軍の特殊訓練を受けていたスノーデンは、残念ながら訓練中の怪我により軍への参加を断念することになります。愛国心に溢れていた彼が次に考えたことは、彼の趣味であるPCや情報での国家への貢献です。9・11テロ以降アメリカはサイバー空間の重要性を上げていました。彼はCIAの試験に受かり、そこで遺憾なくその才能を発揮し、同期の中でも並外れた能力を見せつけます。現場に配属され、アメリカという国を守るぞ、と思っていた彼ですがそこでしていたのはアメリカ国民の監視でした。しかも特定の人ではなくアメリカの全国民が対象でした。アメリカ国民を守るためにやっているはずなのにアメリカ国民のプライバシーを侵害している。彼は自分の愛国心と愛国すべきアメリカの態度にギャップを感じました。そしてその矛先は、彼の彼女に向けられるのです。

こんな感じです。ぞっとしますよね。実はスノーデン、日本にも居た時期があったらしいです。しかも日本のインフラについてもわかっており、もしも日本がアメリカの敵対国になったら日本のインフラをつぶすことも可能だったとかなんとか。恐ろしい話です。演出についても本当に素晴らしく、スノーデンに愛着を抱いてきたところでサプライズがあります。本当に素晴らしいの一言に尽きます。

ただ、まぁこういった作品に多いのはあくまで彼の「正義」について書かれているため。対立構造としてアメリカ国家が圧倒的に「悪」として捉えられているところはこういった作品の癌ですね。社会的な作品はこういった対立相手へのリスペクトが減ってしまいます。相手も決して「悪」の為にやっているわけではないですからね。彼らなりの「正義」があるからそれを念頭に置いていただけたら、見ている側にとってより考えが深まる作品になると思います。以上。